第11章 すれちがう想い
「煉獄さん、無理に諦めなくても良いんじゃないですか?彼女は煉獄さんの所に戻りたいって言ってるんです。」
本当は、私が1番好きで、彼女なんて嫌いだと言って欲しかった。
煉獄さんがそんな悪口みたいな事、言いそうにない事は分かってたのに。
「妹子ちゃん、本気で言ってるのか」
両方の肩を持って、私の目を覗き込むように言った煉獄さんの目を見て、私は涙が出てきた。
「本気で言ったとしたら、煉獄さんはどうするの?」
煉獄さんに掴まえていて欲しかった。だけど素直に言えなかった。
「君が好きなようにしたら良い。」
煉獄さんは言って私を見つめた。
「俺は君を愛してる。でも、君が俺を突き離したいなら、それでも良い。君が選べ。」
私は泣き出した。煉獄さんが私を冷たく突き離した気がして、寒気がした。
「もう、いいです。煉獄さんは私の事なんてどうでもいいからそんな言い方する!!」
私は肩に置かれた煉獄さんの手を外して、身を翻した。
マンションの扉を開けて、入る。
ガラスの扉が私と煉獄さんを隔てた。
私は扉の向こうに立っている煉獄さんを見た。
本当はもう一度、扉を開けて胸の中に飛び込みたいほど好きだった。
でも、色々酷い事を言ってしまった事もあって、それは出来そうになかった。
エレベーターが降りて来て、男の人が降りて来て私に言う。
「こんばんは!乗りますか?」
よく挨拶する人だ。
「は、はい!ありがとうございます」
私は言って、エレベーターに乗り込んだ。
外の街路樹とマンションの明るい照明に照らされた煉獄さんの姿が
見えた。綺麗な金色の髪と、離れていても端正な顔が見える。
ゆっくりと扉が閉まって、煉獄さんが見えなくなった。
扉が閉まる前に見た煉獄さんは、私から目を逸らさずに私の方を見ていた。
でも、追いかけて来てはくれなかった。