第13章 幸せのピース
やらかしたのはあたしなのに、誰もそれを問い詰める人はいなかった。遺言書を見てしまったのは、一時的とはいえ、鍵もかけてないような場所に遺言書を保管してた事に問題があると言う。悟くんも自分のせいだって言う。
妊娠して出て行って勝手に子供を産んだ事だって、ただ愛する人の子を守りたかっただけだろって庇ってくれる。こんなに心配かけて、五条家の中をバタバタにしてしまったのに。
何よりあたしが受け入れられた最大の理由は、悟くんとあたしが、これまで以上に深く結びついたからだ。離れていても愛情が薄まる事がなかったから。それこそが五条の遺言書が求める婚約者だから。
「なぎちゃん、いい事教えてあげる。悟は浮気は一切してなかったわよ。ずっと空を見上げて『夕凪どこにいんだよ』って切なそうにしてたわ」
「おい」
「ほんとのことでしょ」
「奥様、それはあたしも同じです。ずっと空を見て悟さんの事を想ってました」
「あら、そうだったの。仲良しねぇ」
冬の寒さなんて微塵も感じないほどあたたかな空気が体を包み込んでいる。ここは愛で満ち溢れてる。
あたしが今こんなに幸せなのは、出迎えてくれた、見守ってくれた、信じてくれた、許してくれた、迎えに来てくれた、ここにいる人達、全員のおかげだ。この日を一生忘れない。