第12章 ★ハワイ旅行
「あれ、ピアスがなーい」
ちょっと大きな声だったから聞こえた。ツインテールの彼女が砂の中を探してる。落としたのかな。半泣きみたいに悟くんにすがってるからあたしもおずおずと近くに寄った。
「困ってる? あたしも探そっか?」
小さな声で悟くんに話しかける。何となくツインテールから睨まれたような気がしてハッと見ると瞬間的にニコッと笑われる。
「お一人じゃなかったんですね。お友達も一緒だったんだ。待たせてすみません」
「いえ、あたしは大丈夫ですけど今、落としたんですか?」
悟くんがあたしの腰を引き寄せた。
「行くぞ」
「え、でも」
ツインテールが一緒に探して欲しいアピールを悟くんにしてる。
「コイツは友達じゃなくて――」
「あ、彼女さんでしたか。失礼しました。よかったら一緒に遊びません?」
「残念、フィアンセ。遊んでる間に誰かに拐われちゃっても困るし他の人に手伝ってもらって、んじゃね」
ツインテールは「フィアンセ……」って顔をひきつらせて固まってた。気になったから、歩きながら振り返ると、2人はとっくにピアス探すのをやめて、また誰かに写真お願いしてた。
歩きながら悟くんに尋ねる。
「さっきのは逆ナンだったの? 写真撮っただけじゃないの?」
「知らねー。けど彼女いても関係なく遊ぶ気満々だったよな。たち悪そうな感じ」
「……フィアンセって言ってなかった?」
「あーいうのは彼女って言ってもひかねーからフィアンセの方がいいんだよ」
ハワイでも逆ナン慣れしてる。
「今さらだけど悟くんてモテるんだね」
「それはしょーがねーよな、僕だし」
「はいはい、昔からモテモテでした」
またあたしは嫉妬してる。世界中どこでもモテる五条悟。そんなのどうしようもないのに。きっと今のあたしはすっごいブス顔だ。
「じゃあここではオマエは僕のフィアンセって事で」
「え?……」
「逆ナン対策」
「フィアンセはまずくない?」
「じゃ、妻にする?」
「妻? つま? 無理、ムリムリムリムリ」
クックって笑う。いつもの余裕そうな笑みだ。悟くんの言葉にまともに反応しちゃってるあたしをいじって楽しんでんでしょ。ちょっとだけムカつく。
――フィアンセか。これが本当だったらいいのにな