第12章 ★ハワイ旅行
とりあえずホテルに荷物を預ける。ワイキキビーチのすぐ側のホテル。もちろんスイートルームだ。五条の人間は昔からハワイ好きが多くて、このホテルも顔馴染み。
アーリーチェックインするにしてもまだ時間が早いから、下見がてら周辺をぶらぶらと散歩する事にした。時差ボケもあるのか夕凪は少しだけ眠そうだ。
手を繋いでワイキキビーチに沿って歩く。ヤシの木が風に揺れる散歩道は気持ちいい。あちこちに植栽があって緑も豊かなのが、ハワイのいいところ。
「悟くん、あれ飲んだことある?」
歩きながら夕凪が聞いて来た。あれっていうのは、大きな毛糸玉みてぇなココナッツ。日本人観光客らしきファミリーがストロー挿して飲んでる。
「あー。たいしてうまくねーよ。味が薄くて」
「そうなの」
それでもじーって飲んでみたそうにファミリーを見てるから、flesh juiceの看板を掲げた店でひとつココナッツジュースを買ってやった。
「はい、飲みたいんだろ?」
「ありがと!」
首をちょっと傾げて笑う顔がいつもより可愛く見えるのは、常夏の眩しい太陽のせいか? 夕凪がストローでチューって飲んでるココナッツの穴の中に、もう1本ストロー挿して僕も一緒にそれを飲む。
ストローを吸う夕凪の目が僕を見てまあるく見開いた。びっくりしてる時の顔だ。1つのジュースを2人で飲んでんのに驚いてんだろな。
別に美味くもなんともねーこの半透明な飲み物を何で飲んでんのか、自分でもわからねー。頭がコツンってあたる。夕凪の髪のいい香りがする。飲み切る前にカメラを出した。彼女の肩を抱いて寄せる。
少し斜め上からカシャ。
[Photo No.1]
肩組んで寄り添ってココナッツジュースを一緒にストローでチューって飲む悟&夕凪
「ジュースの味はどうだった?」
「……美味しくはないけど……甘かった……悟くんが」
言った後、照れて下向いてる。付き合って1年以上経ってんのに、何年も五条の屋敷で一緒にいたのに、これくらいの事でそんな反応するのか。まだまだうぶでたまんねーわ。