第32章 Soon You'll Get Better ☆

君が赤井秀一に出会う前に、僕と再会していたら。
そしてそのまま赤井に出会わなければ、ずっと僕のものでいてくれたんだろうか。

そんな、非現実的なことを思っているとはつゆ知らずのサラは、トレイにお粥とスプーンを乗せると、嬉しそうに赤井の方へ持って行った。


「赤井さん。お粥、食べられる？」

「…あぁ」

辛そうな赤井を心配そうに、サラは身体を支えながら起こした。

赤井はスプーンに手を伸ばして、お粥をすくい、口元に持っていこうとしたが、その時、サラが赤井の手を取った。

「あ。ダメ。冷まさないと」

そう言って赤井の手を握ったままスプーンに乗ったお粥に、フーフーと息を吹きかけている。
赤井はそんなサラを見て、より顔を赤くしている。


見てられないな…。


赤井にお粥を食べさせている間、僕はキッチンで洗い物を済ませ、バッグを持って立ち上がった。

「じゃあ、僕はこれで」

「え…。コーヒーでも飲んでいったら？」

「いや。家に仕事残してきてるから。
帰らないと」

「そう…あ、車まで見送る！」

サラはそう言って僕の後をついてきた。