第30章  I belong with you ♪

「サラ…」


零は掴まれてる赤井さんの手を離し、わたしの方を向いた。


「…サラ。
ちゃんと、自分の気持ちを見て」


零の言葉に、涙が溢れる。
わたしはプルプルと首を振る。
そんなわたしに、零は呆れたように髪を撫でた。


「ごめんな。
もう、サラの涙は拭ってやれない」

「れ…っ…」


涙で声がくぐもって、名前すらちゃんと呼べない。
最後の最後まで、わたしは零に何もしてあげられない。


「僕は、サラの笑ってる顔が好きだよ。
…だから、ちゃんと僕の目を見て笑って」


そう言われて、涙で濡れた目で零を見ると、零は今までで一番、優しい目で笑ってた。

その優しさにわたしは何度も救われたのに…

わたしは、零の目を見て、精一杯笑った。

こんな、悲しくて優しい別れを選ばせたのはわたしだ。


「うん…。…嫌なことは我慢せずちゃんと嫌って言いな？
あと、お酒に頼るのはほどほどに。
…朝起きて隣に誰もいないのが嫌なら、ちゃんと早起きして。
…それから…もう、零って呼んじゃダメだ…」


零は、最後に泣きそうな声でそう言って、わたしに背を向けた。