第28章 最愛　♪

「サラ！」

駐車場にある零の車の前に戻ってくると、零はわたしの姿を見つけるや否や、わたしを力一杯抱きしめた。


「…無茶するなってあれほど言ったのに」

「あはは。ごめん…USB、取り返したよ」

「さすが。…サラ？何かあった？」


零はわたしの顔を覗き込みながらそんなことを聞いてくる。
どうして、すぐにバレちゃうんだろう。


「…なんで？」

「悲しそうな目をしてるから」


悲しそうな目…
言えなかった。零には。

赤井さんに銃を突きつけても撃てなかったこと。
そして、赤井さんになら殺されても良いと彼に伝えたこと。

わたしの、赤井さんに向かっていく気持ちも。


言えなかった。