第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近
「音が鳴る度に君の笑顔が見れるならば寒さなど感じない。早速屋敷に帰ったら居間に吊るそうか。帰るのが楽しみだな」
「笑顔にもなりますよ!私がいいなって心の中で思っていた物を、杏寿郎君も気に入って下さったのですから。嬉しい……杏寿郎君、ありがとうございます!」
2人にとってはいつも通りの会話。
しかし日々客の相手をしている店主であっても、ここまで初心で甘々な会話を間近で聞くことなどそうそうあるものではない。
胸の中がキュンで埋め尽くされていても仕方のないことだろう。
「お、お待たせ致しました。それと……ご馳走様でした。ぜひまたお2人でいらしてください。可愛い小物、たくさん仕入れておきますので」
ご馳走様……もうお腹いっぱいに違いない。
やはり何に対してご馳走様と言われているのか分からない杏寿郎は、頭の中を疑問符で埋めつくしつつ手渡された風鈴を受け取って頭を下げた。
「ぜひ寄らせていただく!ここにはこの子が好きな物が多くあるみたいですし、俺も今度ゆっくり見せていただきたい。では失礼します!、帰ろうか」
「あ、はい!店主さん、また寄らせていただきます!今日は相談に乗っていただきありがとうございました。可愛い小物、楽しみにしていますね」