第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近
列車の任務から少し経った頃、は珍しく1人街内の商店が立ち並ぶ通りを歩いていた。
「杏寿郎君が起きられる前に帰らないと。書き置きしてきたと言えど、起きて部屋の中に居なければ驚くでしょうし」
ここまで漕ぎ着けるのは大変だった。
杏寿郎と同じ部屋で寝ているため抜け出すのは困難を極めたのだ。
朝目が覚めてが布団からこっそり抜け出そうと起き上がれば、その時に出る僅かな音や動く気配で杏寿郎が目を覚ましてしまう。
……基本的に杏寿郎が先に起きていることの方が多かったが、今日は疲れていたのか運良く起こさずに脱げ出せ今に至る。
「お着物のお礼……何がいいでしょうか?家具は今度一緒に見に行きますし……そもそも高価過ぎて買えない……そうなると、気軽に受け取っていただけるものですよね?」
まだこの街に越してきたばかりで何が何処にあるか分からず、また何を買うと決めていないはキョロキョロしながら通りを歩く。
呉服屋や花屋、食事処に甘味処に八百屋など見ているだけで楽しくなるが今は何分ゆっくり見ている時間はない。
早くめぼしいものを見付けなくては杏寿郎が目を覚まして心配してしまうから。
「杏寿郎君の好きな物……そう言えば食べ物だけしか知りません。何か普段気兼ねなく身に付けられるものはないでしょうか?」