第15章 理由
幸せで穏やかな生活は瞬く間に流れていき、更に7年の時が過ぎようとしていた。
朱莉は10歳、そして後に生まれた杏寿郎……いや、煉獄家男子全員に瓜二つの紅寿郎と名付けられた弟は5歳になっている。
慎ましやかながらも家族4人仲良く生活していく中で、花火大会や初詣、お狐様との戯れに相撲大会や演武などを皆で楽しんでいたある日。
門下生たちへの稽古を終えてが紅寿郎を連れて風呂に入り杏寿郎が居間でくつろいでいると、朱莉がそこへとやって来た。
「お父さん、聞きたいことがあるの。今時間大丈夫かな?」
「ん?もちろんだ!どうした、改まって!何でも聞くといい!」
杏寿郎のいつも通りの快活な笑顔と声にホッとして表情を緩めたものの、今から聞く内容に心臓が激しく胸を叩く。
それをどうにかやり過ごし、杏寿郎の隣りに腰を下ろした。
「ありがとう。あのね、お母さんの力の話をする時、どうしてお父さんは悲しそうな表情になるのかなって。随分と前に天元お兄ちゃんから、その理由を聞くならお父さんに直接……お母さんのいないところで聞きなさいって言われたの」
ついにこの日が来てしまった。
今までの自分の言動を悔やんだところで無かったことにはならないし、朱莉の疑問も晴れることはもちろんない。