第10章 ※湯けむり旅情
その心地好さにがまだ火照りのおさまらない体を委ねていると、杏寿郎の片腕が体から離れてしまい慌てて背に重い腕を回してしがみついた。
「違う違う、離れるのではない。褌を外していただけだ、が落ち着くまで何もしないから心配するな」
その言葉に安心したのかは腕の力を少し緩めてその手を杏寿郎の髪へと動かし、呼吸の度にふわふわと揺れる毛先を指に絡めて感触を楽しみだした。
「……?どうした?髪に何か付いているか?」
「いえ、柔らかくて綺麗で……思わず触れていました。フフッ、少しヒヨコみたいで可愛らしいです」
楽しげなの声に反応して顔をそちらへ向けると、涙で濡れた頬を紅潮させながら穏やかな笑顔を浮かべていた。
杏寿郎は男なのでヒヨコと言われても喜ぶことはないが、幸せそうなの笑顔は杏寿郎の心を暖かくした。
「のお気に召したのならば何よりだ。しかし……そんなに余裕ならば待ってやる必要はなさそうだな」
杏寿郎の妖艶な笑みを瞳に映したは穏やかな笑みから一変、こちらも杏寿郎の欲をそそる色香漂う表情へと変化する。
「はい。でも……今日は私が動きたいです」
その言葉を聞き終わったかと思うと今までと布団を映していたのに、いつの間にか天井と顔を真っ赤に染めたの顔が杏寿郎の瞳に映った。