第9章 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
大晦日の夜。
夜と言ってもあと半刻もしないうちに年が明ける時刻。
と杏寿郎はとある山の麓で元柱たちと待ち合わせをしていた。
そこには相変わらず到着の早い2人しかまだおらず身も凍りそうな寒空の下、体を寄せ合い互いの温かさで暖を取りながら皆を待っている。
「覚えているか?が生家にやって来た日、俺が井戸の水を頭からかぶった時のこと」
問われたは考えるまでもなくすぐにその時の様子が頭に浮かんだようで、クスリと笑って頷いた。
「もちろんですよ。突然隊服を脱ぎ捨ててお庭を駆けて行かれて驚いたので、今でも鮮明に覚えています。今更ですが、あの時はどうしてあんなことを?」
あの屋敷から連れ出してもらい、当時のは目まぐるしく変わりゆく自身の環境に緊張や驚きの連続だった。
綺麗な着物を買い与えてもらい、産屋敷家で耀哉様やしのぶと出会い杏寿郎の生家で稽古をつけてもらうこととなった。
その同日に千寿郎が用意してくれていた芋羊羹を食べ、あまりの綺麗さと美味しさに感動し笑みを零したものだ。
そんな状態のにはその時の杏寿郎の行動は未だに解けない謎として残っていた。