第8章 第26章 月と太陽(1874~1878ページ)
ほんの一瞬、に向けられていた実弥の瞳が悲しげに揺れた。
「あぁ……まぁ、気にすんなァ。お前はこれでも食っとけ」
杏寿郎が手にしている皿の上に乗っていた1口の大きさに切り分けられたおはぎを指で摘んでの口へ押し込み、実弥は悲しみを感じさせない笑みを残して台所を後にした。
「杏寿郎君、私……聞いてはいけないことを聞いてしまいましたか?」
「……いや、不死川は気にするなと言っていたので君が落ち込む必要はないだろう。いつも通りは笑顔でいればいい」
想いを寄せている本人から頑張ってと言われたから……なんて言えるはずもない。
それに実弥はに対して妹という認識を変えるつもりはないと言っていたのだ、杏寿郎も言わないと約束したので心に痛みを感じようともに伝えるわけにはいかない。
少しシュンとしているの頭を撫でて手に持っている盆を受け取ってやり、背中に手を当てがい居間へと促した。
「茶の後は俺と不死川の舞を見るのだろう?皆も居間で待っている!行こう!」
「はい!お2人の舞、すごく楽しみです!」
ようやく笑顔に戻ったを連れ……微妙な空気の流れる居間へと足を動かした。
その後の舞は言わずもがな……舞のはずなのに実践さながらの威力の技を2人が繰り出していたので、の胸の中に疑問が残ったそうな。