第8章 第26章 月と太陽(1874~1878ページ)
力をなくしていたとしても使えていた事実は変わらず、変に話が歪曲して再びの身が脅かされることがあってはならない……と考えたお館様の決断だ。
「そうですね……失いたくなくてどうしても助けたかったのに間に合わなかった方々の存在が、易しくない鍛錬をこなすことの出来た1番の要因です。それに無力だった私を拾い育ててくださった杏寿郎君に……少しでも近付き報いたかったの。結局は追い付けないまま鬼殺隊は解散になっちゃいましたが」
その想いを繋ぎ止められたのも治癒の力があってこそ。
言えないもどかしさはあるものの、ここで自分が話してしまえば緘口令を敷いてくれたお館様やそれを頑なに守ってくれている鬼殺隊隊士に申し訳が立たない。
気持ちを切り替えたはニコリと笑い、疲れを感じさせない動きで立ち上がった。
「私と同じ鍛錬がしたくなったらいつでも仰って下さいね!今でも私は当時とほぼ同じ鍛錬を毎朝行ってますので。さて、私は師範と実弥お兄さんに手合わせを願ってきます。皆さんはお茶を飲んで休憩していて下さいませ」
これ以上話すつもりはないとの笑顔が物語っている。
何か自分たちに言えない秘密があるのだろうが、いつも優しい師範代を困らせることが出来るはずもなく門下生たちは頷き、機嫌良く杏寿郎と実弥へ歩み寄っていく華奢な背中を見送った。