第7章 ※ 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
体の奥にまで響く破裂音、次々と夜空で開き散っていく花火は2人だけでなく同じものを見ている人々も魅了し、至る所から歓声が上がっている。
(綺麗!本当に……綺麗です)
初めて目にした花火の美しさはの視覚はもちろん心も満たし、知らず知らずのうちに頬を涙が流れていた。
それを拭おうと手を動かしかけたが、その手が頬に到達する前によく知る温かく優しい手が涙を拭ってくれた。
拭ってくれた杏寿郎を仰ぎ見ると、やはりいつも通り優しく目を細め笑みを向けてくれている。
「綺麗だな。もう少しこっちにおいで、もたれるといい」
「はい、ではお言葉に甘えさせていただきます」
肩を抱き寄せてくれる腕の力に身を委ね、は杏寿郎へと寄り添い自分より高い位置にある肩に頭を預けた。
その間も花火は空高く舞い上がっては散っていき、2人の全身を震わせ心を満たし続ける。
「杏寿郎君、来年も一緒にここへ花火を見に来たいです。構いませんか?」
花火から杏寿郎へと視線を移したの顔は幸せそうに綻んでおり、そんなの願いを杏寿郎が叶えないわけがない。
「もちろんだ。来年も再来年も……毎年ここへ赴こう。、もう終盤のようだぞ!一気に打ち上がるのでしっかり目に焼き付けよう!」
杏寿郎が指さす方向へが向き直ると、本当に今までとは比べ物にならないほどの数の花火が轟音と共に打ち上がり、夜空一面を綺麗な花が咲き乱れて辺り一体を明るく照らし出した。