第7章 ※ 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
無邪気に喜ぶ姿に微笑み、杏寿郎は少し離れた場所で浴衣を見下ろしている笑顔のに手招きする。
「こっちにおいで」
「はい!どうされましたか?」
嬉しそうに歩み寄ってくる様に笑みを深め、目の前に到着したの眼前にある物を翳して揺らした。
それに伴っての柘榴石のような瞳も驚きからかユラユラと揺れる。
「俺からへ。いつも師範代の務めを果たしながら家の事もこなしてくれているささやかな礼だ。受け取ってくれるか?」
「いいのですか?だって……杏寿郎君も毎日一緒に家の事をしてくださって、更には師範の務めを果たされているのに。あ、いえ!嬉しいです!本当に……ありがとうございます」
なかなか手を差し出してくれないに杏寿郎が僅かに眉を下げると、は慌てて翳された物を下から受けるように両手を差し出した。
晴れやかな笑顔になった杏寿郎からへと贈られたもの、それは以前にが杏寿郎に贈った赫い帯飾りと色違いの揃いの帯飾りだった。
杏寿郎の腰で揺れる帯飾りより深い赤である硝子玉は、の瞳の色にそっくりの色をしている。
それをさっそく帯に挟み込み、間髪入れず杏寿郎の胸に飛び込んで行った。