第6章 第26章 月と太陽 1873ページより
顔を綻ばせながら足を前へ投げ出し完全に杏寿郎へ身を委ねだした。
「君は相変わらず俺の前だと無防備で緩々だな。このまま襲われても文句は言えないぞ」
「杏寿郎君になら襲われても嬉しいだけです。どんな時もお優しいので……肌を合わせている時も幸せな気持ちになります。だから……もう少しだけこのままいさせて下さい。すごく……心地好くて」
その言葉通り本当に心地好いのだろう。
何度かゆっくり瞬きを繰り返した後……完全に瞼が閉じ夢の世界へと旅立ってしまった。
「君は忙しいな。つい先ほどまでニコニコしていたかと思えば、あっと言う間に眠りについてしまうのだから。煽るだけ煽って眠ってしまうとは……困ったものだ」
困ると言っているものの杏寿郎の表情はとても穏やかで、眠りについたの頬を撫でている今も絶えず笑みを浮かべている。
「仕方がない。あと少しだけこのままいようか。君の願いは出来る限り叶えてやりたいからな」
起こしてしまわないよう、ずり落ちていきそうな体をそっと抱き寄せて、夜風に揺れ澄んだ音を鳴らす風鈴に目を向ける。
毎日によって慎重に磨かれているそれは未だに新品のように綺麗で、月明かりをふんだんに浴びてキラリと光を放った。