第1章 美味しいコーヒーとキスの味(校長)
「おいしいブラックコーヒーは甘いだぁ?」
コンビニの広告を見て呟いていた。
「そんなわけねーだろ」
校長は、私の手を引いて学校へ向かう。
私は「校長が苦いの好きなだけだよ」と答えた。
校長は私にニヤッと笑い返す。
「そうだな。何でブラックコーヒーを飲むのかっていや、あの最高峰の苦い味を求めているからだ」
甘さなんて必要ないんだよ、と顔を歪めた。
校長を見かけると、白いマグカップでブラックコーヒーを飲んでいることが多かった。
そして、私を見つけては愛情表現、とか言って拘束しキスをしてくる。
「甘さって、旨味のことじゃないかなぁ」
私がこう呟くと、校長は眉を潜めた。
そんな様子を見て、私は下を向く。
「コーヒーってよくわかんないけど……」
校長が前に来て、座り込み私の顔を覗いた。
「俺とのキスは苦いだろ?」
ニヤニヤしている。
確信をしている真っ黒い顔、真っ黒い口。
コーヒーで染まったんだろう。
「甘いよ」
少し強い語気で言った。
しばらく交直したが、黒い目が大きくなり、顔が赤く染まった。
私が校長とのキスが苦いだけでないってことは……。
言った私も赤面する他なかった。