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木洩れ日の休息・短編集【刀剣乱舞/R18】

第2章 春の悪戯(なきさに)


「あたしから誘っておいてごめんね、鳴狐…。 今日散策デート出来なくなっちゃったんだ」

「分かった…じゃあ電話切るよ…」

香澄からの電話に華やいだ心が一瞬にして沈んだ。

『鳴狐、鳴狐大丈夫ですか!?』

「今日会えないってさ…」

(何かしたのか…)

『なんと!? 彼女殿は何か仰られましたか?』

「…理由は聞いてない」

久しぶりのデートと聞いて、狐と共に"いなり寿司"を沢山作って出掛ける準備も済ませて居たがそれも言えずに…。
口下手でいつも話掛けてくれる香澄に甘えてた。
狐が自分の変わりに代弁してくれて居たからだ…。

(――モヤモヤする、こんな気持ち初めてだ)

鳴狐はいなり寿司の重箱を綺麗に包み、出掛ける準備を整える。

『…鳴狐、何処へ行くのですか?』

「待ってても始まらないから、今日は待たない日…行こう、香澄のところへ」

『お供致しますよ』


電車へ乗り最寄り駅まで行き、香澄のマンションへと足を運ぶ、少し気が重い…入れて貰えなかったらどうするか…嫌な事しか想像出来なかった。

インターホンへと手を伸ばしたが、躊躇して押せない鳴狐に対して狐が腕をつたい歩き鼻でインターホンを押した。

「えっ? 鳴狐? なんでここに?」

突然の訪問に驚く香澄。
部屋に入れてもらいソファーに座ると…

「今日会えない訳が知りたくて……俺の事が嫌いになった…?」

「それは違うよ、鳴狐!

最近"くしゃみ"が止まらなくて検査してみたら…あたし花粉症みたいで、散策してたら目が痒くなるし、迷惑かけるって思ったんだ…。
花粉症以外、ダニやハウスダストも反応してて…あたし全然知らなくて…びっくりしちゃった」

香澄が検査をしたと言う診断結果を見てられた。

「本当にそれだけ…??」

「あたしは鳴狐の事が好きだよ、不安にさせてほんとごめんね?」

「暫くこうさせて…落ち着きたいから…」

鳴狐が香澄の肩に顔を埋める。
優しく鳴狐の頭を撫でる。
香澄の太股には狐の姿が…


――あたしは手のかかる"狐"を二人も面倒みないと駄目なの?
それも悪くないけどね…。


…完…
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