Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第1章 美しき姫君1
晩秋 *霜月《しもつき》
日の本 和智翔ノ国《わちとのくに》
桜城《さくらじょう》城内 屋根裏部屋
「翔禾《しょうか》姫様、和也《かずなり》様が参られました」
「ありがとう。なずな」
ガラリ
「翔禾姫様、なぜ屋根裏になどおられるのです?」
「ごあいさつです事。和也様。私《わたくし》この屋根裏部屋に住もうかと思って」
「お辞め下さい。翔禾姫様」
「なぜです?」
なぜ? 愚問ですよ。翔禾姫様……
「翔禾姫様は、本家筋。この櫻井《さくらい》家を統率して行かれる方だからです」
美しき姫君…… 翔禾姫様…… 貴女様が…… 治めるべきなのです
「潤《じゅん》兄上様がおられます。私など……」
「代々、女性が櫻井家を、和智翔の国を支配されて来たのです。いずれは日の本を……」
「和也様。潤兄上を当主にと熱望される方々がいるのです。それに、長子が後を継ぐのが良いと私は思うのです」
和也(……)
私は誰かって?
翔禾姫の父方の従兄《いとこ》に当たる者……
**水無月《みなつき》の十七日に十六歳になった
二宮和也《にのみや.かずなり》です。
まぁ追々と……
*霜月 十一月
**水無月 六月