第56章 4月
今日は午後イチでWeb会議で
その後も色々としていたら、あっという間に15時過ぎ
もうそのまま休憩を取らずに過ごしてもよかったけど
用事があったからこの時間から休憩へ
天気が良かったから
そのまま外で遅い昼食を食べて会社へ戻る。
この時間帯のエレベーターホールはガランとしていて
だけど、みんなが仕事中に休憩を取るのは
なんだか得をした気分で好きだった。
上っているエレベーターが降りてくるのを一人で待つ
「……お疲れ様です」
「お疲れ様です。あ」
「あ」
後ろから挨拶をされて振り向くと
そこには
数ヶ月ぶりの黒尾さんが立っていた。
「………お疲れ様です。打ち合わせですか?」
突然のことで、動揺
そっか、4月だもんね。
黒尾さん、帰ってきたんだ。
「あーーー、ウン。そう」
私もどうかと思うけど、
黒尾さんによそよそしくされて。
"お疲れ" ではなく
"お疲れ様です" と言われて。
チクリと
少しだけ、胸が痛む
エレベーターは上の階からまだ降りて来ない。
「………仕事、どう?」
「おかげさまで、順調です。
黒尾さん、戻って来られたんですね。
1年間、お疲れ様でした」
精一杯の笑顔で
「そっか。よかった」
黒尾さんの "よかった" という言葉に
私たちの最後を思い出す。
黒尾さんに最後に会ったのは
去年の7月
仕事がわからない
終わらない
帰れない、と
会社で初めて泣いた日だ。
もう、遠い昔の出来事で
そんなこともあったな~
なんて。
そんな感じ。
そのくらい、黒尾さんと過ごした時間も
遠い昔の出来事になっていた。