第1章 恋の味を教えよう
「ねぇ、恋の味って何?」
「は?」
それは突然の言葉だった。
黒崎一護は手に持っていたジュースのパックを思わず落としてしまいそうになるくらい、度肝を抜かれた。
昼休み。
珍しくいつものメンバーが、それぞれの所用によって別々に食事を取ることになって、初めてかもしれない恋人と二人っきりの昼休み。
まだ付き合い始めて二週間。
ドキマギしながら、楽しい会話を続けている中で突然途方もない質問を受けたのだから、頭がフリーズするのも許して欲しいと一護は思った。
「いきなり、なんだよ」
一護はジュースのパックを落とさないように地面に置くと美穂子が眉を潜めた。
「だって。啓吾が…恋の味を知らないなんておかしいって」
「あ?」
もともと吊り上がり気味の眉をぴくりと一護が吊り上げた。
すると、美穂子は少し言い難そうに一護を見た。
「-…一護と、その…付き合い始めて二週間たつのに、恋の味知らないのは…好かれてないんじゃないかって」
美穂子は視線を落とした。