第18章 bird cage
しばらくの間
チサトの心臓の音を聞いていたタケルが
そっと身体を離した
そして
タケルは
静かな声で話し始めた
「……兄さんに…マネージャーをして欲しいと頼んだのは………僕だったんだ…」
『……』
「…………母さんが死んだ時……自分の居場所を失ったような気がして…絶望していた僕に………兄さんはこの仕事を辞めてもう自由になれって言ったんだ……………母さんが閉じ込めた鳥籠から……外へ出ろって…」
『……』
「………でも……僕は鳥籠から外へ出るどころか…………反対に兄さんをその中に閉じ込めた………………兄さんが僕にした事をたてに取って………僕をひとりにしないように………僕から離れて行かないように………兄さんを…っ…」
タケルはそう言って
悲痛な表情を浮かべた
『……タケルさ…』
「兄さんはこの業界が大嫌いだった!………心から憎んでた…………耐えられなくなって……何度か僕に他のマネージャーを付けるように言ってきたよ……………個人事務所をたたんで…大きな事務所に入るように言われた事もあった………………でも…僕は……全ての提案を受け入れなかった…」
『……』
「……いけないって分かってた……けど……兄さんが僕を置いて…離れて行くのが嫌だった…………ひとりになるのが怖かったんだ………………だから……そういう話が出る度に…僕は過去のことを持ち出して兄さんを責めた…………兄さんが……僕から離れて行かないように…」
強く握った拳が微かに震えていた
タケルは声を絞り出すように続けた
「………でも………僕が本当に望んでたのは……そんな事じゃなかった……」