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bird cage 【R18】

第14章 クランクアップ




長いようで短い夜が明け
ついに
ドラマのクランクアップ当日となった



楽屋を出て
メイク室へと向かう途中で
廊下の向かい側から歩いて来たカヲルを見つけると
チサトは
どこか吹っ切れたような
清々しい笑顔で『おはようございます』と言った


「……おはようございます…」

『………考えてくれましたか?……昨日の話…』

「……」


少しの沈黙の後
カヲルは頷いた


チサトは周りに人目が無いのを確認すると
カヲルの手を引いて空いている楽屋へと入って行った


『………最後の撮影が始まる前に……聞かせてください…』

「……」

『…………カヲルさんの未来に………私を連れて行ってくれますか…?』


眉を寄せて俯いていたカヲルが
静かに口を開いた


「………チサト…………一緒に行くということは………君が今までに努力して築いてきたその立場を…全て捨てることになる…」

『……はい………分かってます…』

「……………俺の新しい仕事が…成功する保証もない…………慣れない土地で…辛い思いをさせてしまうかもしれない…」

『……覚悟はできてます…』

「………っ…本当に……いいのか?………大切なものを全部置いて………俺なんかと…」

『…カヲルさん…』

「……」

『…………昨日も言った通り…………私は……アナタと居られたら…それだけでいいんです…』

「……」

『………ずっと………側に居させてください…』


チサトの心を表すような
曇りのない真っ直ぐな瞳

深く知る程に惹かれていくその瞳を
カヲルは今度こそ
しっかりと腕の中に包んだ



「………チサト…………ありがとう…」




力を少し緩めると
腕の中でチサトがゆっくりと顔を上げる

カヲルは
柔らかな頬に溢れた雫を指先で拭うと
愛しい人の唇にそっと口付けた







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