第37章 ※ 固陋蠢愚②
「な、なみ……さん?」
身体の震えに合わせて、声も揺れる。
顔を上げたら、頬を赤く染めた七海さんがそこにいて。
「……やっと、私が見えましたか?」
せめて怒ってくれれば楽なのに。
それでも困り顔な七海さんに、言葉が出てこなくて。
代わりに涙なんか流してしまう私に、なぜか七海さんは、また唇を重ねた。
「七、海……さんっ……あ、ぁ……っ」
「まだ……ツギハギの呪いが……抜けきって、ないでしょう?」
私の身体を心配して七海さんは尚も私から呪力を奪おうとしてくれている。
意識は戻っても、まだ身体の中はうるさくて。
七海そんに「大丈夫だ」ってただ一言伝えたいのに、それすらどう音にしたらいいのか、分からない。
どこからが私の思い描いた五条先生との夢で、どこからが七海さんとの現実なのか……それも全然分からない。
「アナタは……悪くない」
その言葉に甘えていいはずないのに。
「だから……今は……自分を責めてはいけませんよ」
バカになった頭で理解できることはたった一つ……七海さんの優しさが気持ちいいってことだけだった。