第25章 情
「や、めて」
怖くて、声が出ない。
これから始まることを、想像したくもないの。
《怯えた顔も、感嘆するほどに美しいぞ……皆実》
「……虎杖、くん。ね、虎杖くん……っ」
お願い、起きて。
無駄と分かっていて、私は宿儺の身体を揺らす。その中で眠ってる虎杖くんに声をかけ続ける。
でも、私の声は届かない。
《オマエを守るなどと、この身体が皆実を今から傷つけるとも知らずに……よく口にしたものだ》
愉しげに言って、宿儺が私の頭に力をかける。
この力に、逆らうことは、できなくて。
「い……や」
大好きな人の香りが漂う部屋の中。
私に重なる唇は、邪悪な呪いの味がした。