第4章 藤の花の秘め事【不死川実弥】
ある夜更け。
一人の隊士が藤の花の家紋の屋敷を訪れた。
「邪魔するぜェ。一晩部屋を借りたい」
すると、一人の少女が出迎えて丁寧に頭を下げる。
「不死川様、よくご無事で。今日は天気も悪いですしお泊まりになってゆっくりとお休みください」
「あァ。世話になる、此花。ところで"離れ"は空いてるかァ?」
その言葉に ピクリと反応しただったが、表情を変えずに答えた。
「……空いております。後程食事をお持ちしますね。それから、怪我をなさっているようなので包帯も」
「頼んだ、ぜ?」
妖しく笑う不死川を案内するとは手早く用意をし、"着替えて"離れに向かった。
しばらくして
「失礼します、不死川様」
「あァ」
部屋に入ると、不死川は布団に寝転んでいた。
備え付けの湯船に浸かったのか浴衣姿だ。
「こちらお食事の膳ですが…その前に治療しても?」
「頼む」
が近づくと不死川は上半身を起こす。
浴衣を捲って二の腕を見ると痛々しい切り傷があった。
「無茶しすぎですよ…いくら稀血で鬼を呼べるといっても…」
「いいんだよォ。それより」
不死川はの手を掴むとグイッと顔を近づけた。
「二人の時は"不死川様"じゃねェだろォ、…」
「っ…もう…実弥さん」
この二人、周囲に秘密にしているが恋人である。
騒がれるのが嫌なのと、が公私混同はしない!と言い張り、仕事の時は他人行儀な呼び方をしている。
「ったく、久しぶりに会った恋人に"不死川様"は堪えるねェ」
「う、…許してくださいよ、それは…」
「まぁ、んな格好できたってことは…もそのつもりなんだよなァ?」
クククッと意地悪く笑う不死川。
は真っ赤になって俯いた。
「そ、れは…実弥さんが、そう合図を出すから…」
そう。
来たときに言った『"離れ"は空いているか』とは、恋人として濃密な時間を過ごしたいという合図。
それを聞いたから…今のは夜着一枚だけを纏った姿だ。