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恋模様、快晴のち火の雨。

第2章 ある血族


「…改めて、ようこそ。森田」
そう話を切り出した長髪の男。
「はじめまして、『シックス』」
『シックス』。いかにも凶悪そうな面構えのこの男の名。
表向きは、大手兵器メーカーの社長、ゾディア・キューブリックとして、日本の警察や軍事トップと友好関係を持っている。
「時に、森田は高校生なのかな?」
私が今いるこの場所は、『シックス』が組織するテロ集団の中枢。彼の言葉通り高校生という立場の私が簡単に立ち入れる場所ではない。軽率にはい、と答えるのには多少躊躇して、何か問題が?と訊いた。
「いや。『新しい血族』は人の類。性別も年齢も関係ないよ」
「…差し出がましいようですが、『シックス』」
ニッコリと効果音が付きそうなくらいの笑みを浮かべる彼に、私は前置きをしてから口を開いた。
「私はあくまであの人の相棒。今日からこの組織に身を置く事にはなりましたが、私自身は血族ではありませんので」
それから、数秒の沈黙。顔をぴくりとも動かさない『シックス』が少し心配になってきた頃。ふ、と彼が息を吐いた。
「森田は面白い子だ。まるであいつのような事を言う。日本人は信仰心が薄いと聞いたが、2人を見る限り事実そうらしい」
声のトーンは明るくなったが表情は先程と殆ど変わらない。常にこの笑いを浮かべているのかと思うと少々ぞっとした。
「あいつには君の自慢話をよく聞かされてた。いい相棒を持ったね」
こんなことを言われては自然と表情も緩む。ありがとうございますと一言、小さく頭を下げた。
「幸せ者の相棒君に、組織を案内してもらうと良い。途中、他の五本指とも会うだろうから、挨拶しておきなさい」
変わらず笑顔の男にはい、と一言返事を返す。
「それじゃあ、下がっていいよ」
「はい、失礼します」
最後にもう一度深く礼をしてソファーから立ち上がり、踵を返した。二人が本当に似ているのなら当分は苦労するだろうな、なんて聞こえたのは、知らないふりをしておこう。
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