第10章 愛しい人
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それから。
白哉は寝る間を惜しんで、探した。
瀞霊廷にあるありとあらゆる書物、記録。
すべてを漁った。
もちろん、卯ノ花や涅も巻き込んで。
美穂子と子供の生きる術を…探した。
けれど、そんな事例などありはせず。
日に日に大きくなる美穂子のおなかの中の子供の成長と共に、募る不安と焦り。
白哉の精神状態は…日々刻々と悪化の一途を辿っていく。
それは、遂に六番隊の業務にも支障が出始め、正直言えばどの隊もその状況にどうしていいか、わからなくなり始めていた。
「恋次」
大量の書類を手に執務室を出たところで、恋次はルキアに呼び止められた。
ちらりと時計を見れば、既に昼の時間帯だった。
「ルキア…悪ぃ…その」
少し言いにくそうにする恋次に、ルキアは首を振った。
「わかっておる。六番隊の業務、滞っておるのであろう?」
「あぁ…美穂子が仕事に来れなくなってから、少しずつ滞り始めてたんだけどよ。まぁ…隊長もあんな状態だからな」
隊首室をちらりと見て、恋次は小さなため息をついた。
もう二週間以上も、白哉は隊首室に姿を現さない。
どうしても隊長の判子が必要なものは、朽木の家に運ばれて数日かけて戻ってくる。
それ以外は、すべて恋次が代筆している状況だ。
ルキアは視線を落とした。
こうなってしまった原因は白哉本人から聞かされている。
恋次も、他の隊長も。
だから、それに対して誰も何も言えないのだ。
恋次にも、愛する誰か…ルキアが消えてしまうかもしれないということになれば、何とかしたいと翻弄することだろう。
今回の白哉の行動は、誰もが理解できる。
「……すまないな、恋次」
「気にすんな。後ちょっと、踏ん張ればいいだけだ」
「……美穂子姉様も、子供も助かって欲しい。私も色々と調べてはいるが…」
「……卯ノ花隊長は?」
「打つ手なし、ということだ」
「そうか…」