第3章 瀞霊廷での居場所
他の隊長がその場を立ち去ったことを確認すると、白い髭を撫でて老人は椅子に腰を下ろした。
ふ…っと、威圧感が和らいだ気がして、美穂子は内心で首を傾げた。
「さて。隊首会ではなかなか腹を割った話が出来ぬでの…すまぬな」
「あ、いえ。お心遣い、ありがとうございます」
美穂子はぺこりと頭を下げると、老人は目を細めた。
「挨拶が遅れたが、わしは護廷十三番隊で一番隊隊長と総隊長を務めておる山本元柳斎と申す。さきほども言ったが、しばらくは朽木隊長の元で過ごしてもらうことになる」
「はい。ご面倒をおかけすることになって申し訳ありません」
美穂子は老人と白哉に視線を向けてから、もう一度頭を下げた。
「一応、朽木隊長より発見された経緯は聞いておるが、藍野は現世から来たのかの?」
「現世…?」
美穂子が首を傾げると、総隊長は静かに白哉へと視線を向ける。
白哉は小さくため息をついて、口を開いた。
「現世とは、生きている人間が住まう世界のことだ。ちなみに、ここは尸魂界と呼ばれる人の魂が輪廻へと還る場所だ」
美穂子は目をぱちくりさせて、少し視線を上に向けて考えた。
どういう経緯でここにきたかはいまいちわからないが、とりあえず自分は生きていたし…今も死んだつもりはない。
(ってことは、現世とこの人たちが呼んでいるところから、何らかの手違いで尸魂界へ来ちゃったってところかしら)
けれど…それはあくまでも仮説でしかないので、そうだとも答えにくい。
美穂子はうーんと唸ってから、首を振った。
「わかりません。確かに私は生きた人間です。そこが総隊長や朽木さんが言う現世と言うところなのか…現世と言うのを見ていない私としてはわかりかねます」
「ふむ…。思った以上に冷静な上に、先ほどの霊圧にも耐えておる。かといって知識は瀞霊廷に何か脅威を持っているには、あまりにも少なすぎるのぉ」
「霊圧…?瀞霊廷…??」
美穂子はまた首を傾げたところで、総隊長の視線は白哉へと移動した。
「朽木隊長。四十六室へはわしから話を通しておこう。別段、危険性は少ないじゃろうが一応お主の監視下に置く。行動もできるだけ見える範囲で頼む」
「承知した」
白哉の声に、揺らぎはなかった。