第1章 collaboration
第一印象は
最悪だった
とあるテレビ局の歌謡祭
リハーサルに遅刻してきた彼女は
共演相手の僕達に謝るどころか
自分から挨拶すらしなかった
立ち位置を確認しながら通しで曲を流した時も
上着のポケットに手を入れたまま説明を聞いているだけだった
「…それでは……一度…実際に動きを交えて歌って頂きます…」
スタッフがそう言うと
彼女は『その必要はないでしょ』と言って控室へ戻ろうとした
そんな態度の彼女をいい加減黙って見ていられなくなった僕は
思わず注意をした
「……もう少しちゃんとリハやろうよ……生本番で怪我とかしたら…洒落になんないでしょ…」
足を止めた彼女は
呆れたような顔で僕を見つめて言った
『……怪我?………立ち位置確認すれば十分でしょ…素人じゃあるまいし…』
そう言って
彼女は廊下を歩き去った
「……なんか…感じワル…」
夏生が言うと健人が頷く
「………テレビで見た時は……見かけによらず真面目な子なのかと思ったんだけどな…………東條アンナ……」
2人の声を聞きながら
僕は彼女の背中を見つめていた
「……」