第2章 後日談 after the cloudy
けれど、あの時の手紙だけは、ちょっと何かを感じ取ってほしい、とは思っている。
淡い希望。叶うかどうかは、半々、くらいだろうか。
かつて書いた、あの時の文面を思い出す。
「……俺は俺、だもんな」
こっそりと呟く。
——あなたの心配より、あなたの笑顔が嬉しい。
翔さんは、人に心配をするには、優しすぎて、繊細過ぎるのだ。見ているこっちが肝を冷やしてしまうくらいに。
だから俺は、あなたには、笑っていて欲しい。何も知らないふりをして、いつも通りにしていて欲しい。
あなたの笑顔が、好きだから。
「メイク、終わりました!」
「ありがとうございます」
仕事を終えたメイクさんが、その場を去っていく。彼女も一つ、仕事を終えた。
鏡を見ると、いつも通りの「嵐のニノ」がいる。試しに鏡に向かって笑いかけてみると、それは紛れもない、テレビにいる芸能人。「二宮和也」ではなく、「嵐のニノ」。
今日もまた、一日が始まるのだ。
振り返ると、偶然、翔さんもこちらを見ていた。どうしたの、とでも言いたげに、優しい微笑を浮かべて。「嵐の翔ちゃん」のメイクをした、「櫻井翔」の笑み。
……あぁ、俺の大好きな笑顔だ。