第9章 5年後
サトル side
「…おぉ…来たか……マナ…彼の隣に座りなさい…」
『……失礼します…』
彼女は優雅に微笑むと
僕の隣に座った
「……真山君……紹介するよ…彼女がマナだ…」
『……よろしくお願い致します…』
「…………よろしく…」
スポンサーとプロデューサーを相手に笑顔で接客する彼女を
僕は放心したように見つめていた
まるで
夢を見ているようだった
大きくカールされた栗色の巻き髪
マニキュアが施された美しい指先
紅く彩られた艶やかな唇からは
妖艶な色香が溢れ出ていた
5年の月日が
少女を大人の女性に変えたのだった
彼女は僕の方に顔を向けると
視線を絡めとるように瞳の奥を見返した
潤んだ黒い瞳が
妖しく微笑む
彼女は
まるで
大きく羽根を広げて
捕われるのを待っている
美しい蝶のようだった
僕の頭の中に
痺れるような警報音が響いた…
《 蝶 end. 》