第6章 新しい生活
サトル side
" SAISON "を出た僕は
足早に駐車場へ向かい
車に乗り込んだ
乱暴にドアを閉め
静けさに包まれると
深く息をついた
身の上話を聞き
マンションで一緒に暮らすようになったあの夜から
僕は
リサとの関係に一線を引いていた
頼れる人間が誰も居ない彼女の
保護者代わりとは言わないまでも
少し離れた所から見守る『兄』のような存在になれたらと
心のどこかで思っていた
身体を抱き締める事はあっても
もう以前のように彼女を抱く事はしていなかった
リサは少し不満そうだったけれど
一緒に暮らす上でのケジメだと言うと
彼女も渋々納得してくれた
そういう目的でリサを自宅へ連れて来たのではないという事実を守り通す事で
僕は
自分自身の勝手なプライドを保っていたのかも知れない
シンヤからタクミの気持ちを聞かされ
リサに話し掛けている時の屈託のない笑顔を見た時
僕は微かな胸の痛みと共に
これで良いんだと
どこか諦めがついたような気持ちになった
同じマンションで暮らしてはいても
一緒に行かれない場所や
一緒に出来ない事
彼女に与えてやる事のできない物が
僕には多すぎた
普通の17歳の女の子が
普通に経験するであろう楽しい世界の数々を
タクミなら
当たり前のようにリサに見せてやる事ができるだろう
僕は
ただリサに幸せになって欲しかった
安全な場所で
安心できる人達に囲まれて
笑っていて欲しかった
"普通"の17歳の女の子が
きっとそうであるように
今まで辛い思いをしてきた分
いや
それ以上に
彼女が幸せでいられるように
僕が守ろう
改めて
そう心に誓った