第8章 ちいさな用心棒
「なーぉ!にゃぁ〜〜」
「どうしたの?ご飯はまだよ」
違う、そっちじゃない。ご飯も大切だけど……わたしもオシャレしたいの!
どう言えば伝わるかな……。
「そいつは飯じゃなくて、可愛い首輪が欲しいってよ」
「首輪?」
「メスとしての嗜みだろ」
獣人さんが代わりに伝えてくれたのかしら?
綺麗な人は優しい笑みを浮かべて、わたしの喉を撫でていた。
「そうね。女の子なら可愛くなりたいわよね」
あれからわたしは綺麗な人──ヴィルの部屋に連れて行かれ、可愛らしい紫のリボンの首輪をもらった。
ヴィルは自慢げにわたしを王子様に見せ、彼は「ボーテ100点!!!!」と高らかに叫んだ。
「レオナの話によると、この子は王子様の大切な人であるアタシを守ってるつもりらしいのよ」
「王子様?誰のことだい?」
「アンタよ、アンタ」
「私かい!?どうして私が王子様に!?」
「そこまで詳しくは聞いてないわ。でもこの子にとったらアンタは王子様なんでしょうね」
「なんだか照れくさいね」
そうよ、王子様なのよ!キラキラで優しくてかっこいい王子様!!
王子様の大切な人はわたしにとっても大切な人になったの!だからこれからは今まで以上に本腰入れて守るからね!
「フフ、ヴィルを守ってくれていたんだね、ありがとう。これからもヴィルをよろしく頼むよ」
優しい手がわたしの頭を滑る。
任せて。わたしが二度と王子様を悲しませないわ。
「仕方ないから守られてあげるわ。だからしっかりアタシを守りなさい。……イヴィ」
わたしをそう呼んだ彼の笑顔は、今までで一番素敵な笑顔だった。
そしてこの日をきっかけにヴィルと王子様が猫用の服を作り始め、定期的にファッションショーが行われることをここに記しておく。
<補足>
イヴィとはディセンダント(ディズニーヴィランズに10代の子供がいたら…というifストーリー)に出てくる白雪姫の継母の実子。つまり白雪姫の異母妹。