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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】


「やるなら同時。強い力とほどほどの弱い力で同時に叩く」

「あぁ。だが、術式に気づいたことを悟られたくない。俺たちはこのまま全力で馬力をアピールする。詞織、オマエはできるだけ火力の強い術を使え。ヤツは必ず、【あべこべ】で躱してカウンターを狙う。その隙に打撃力の低い【蝦蟇】で攻撃。そこから一気に畳む」

 分かった、と詞織が頷く。

 いまだ【脱兎】の檻から出てこない男に向き直り、伏黒は術式を解いた。

「いねぇ! 逃げたのか⁉」

 逃げるわけないだろ。

「――【満象(ばんしょう)】‼」

 呼び出した【満象】の背に乗り、上空から落下の勢いを借りて落ちるも、男は両手で受け止める。

「はっはっはっ! なんじゃあ こりゃ」

 続けて式神を消し、フェンスの上に飛び退いた。

「出したり消したり忙しない。男ならハッキリしろぃ!」

「そういうのは俺の担当じゃない」

 パワーで押しまくるのは虎杖の担当だ。

「それより、いいのか? 来るぞ」

 スッと道の先を指さすと、そこでは詞織が燃える炎に照らされながら歌っている。


「【誰か星空の残響で この歌を聴いてくれないか】」


 ――【胸の奥でずっと消えない 震えるほど熱い想いに 心が焦がされ 苦しいよ】


「【全て燃え尽きたっていい 君に届く日がくるなら 声が枯れる日が来ても 愛が果てるまで君を歌いたいよ】‼」


 胸が苦しくなるほどの熱い想いに呼応し、炎が渦を巻いて勢いを増し、その熱量に男が目を剥いた。

 詞織の術式を発動させるための時間を稼ぐ。

 詞織は術式の効果もあり、歌っている間に限り、感情の昂りで呪力が増す。だから、和歌を詠むより歌をうたう方が威力も上がるのだ。

 放たれた火球に素手で触れ、男は軌道をそらした。手や身体に呪力を纏っていたのか、火傷はなさそうだ。

 だが、顔に一瞬 焦りが滲んだのは、【あべこべ】の上限ギリギリだったからかもしれない。少し惜しかったが……“狙いはそこじゃない”。
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