第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「あの人、何? タフとかそういうレベルの話じゃない」
「あぁ。全く攻撃が通らねぇ」
詞織とは小学生の頃から一緒に切磋琢磨してきた。互いの手の内も間合いも把握しているし、連携もとれている。現に、こちらの攻撃はしっかり入っている。
それなのに、ダメージを受けていない。
十中八九、男の術式が絡んでいるのだろう。四十一階からの落下で無傷だったのもそれだ。
攻撃の無効化? いや――……。
そのとき、五条の姿が脳裏を過った。
「おい!」
伏黒たちの元へゆったりと歩いて来ていた男が足を止める。
「五条 悟が渋谷に来てる! さっさと【帳】の基を置いて逃げたらどうだ‼」
伏黒の言葉に、男が「くっくっくっ」と喉を鳴らして笑う。
「ハッタリが下手だな。『五条は封印された』。オマエらの仲間が言ったんだぜ、デカイ声でな。つーか、だから 俺たち呪詛師がハシャいでんだろ。五条が元気なら家で寝てるわ」
後ろで詞織がハッと目を見開いていた。
「……あの人、五条先生には勝てないんだ」
「あぁ。アイツの術式は“無効化”なんて大層なもんじゃない」
小さな声で言葉を交わす。
「やる気がないなら、そろそろ殺すか?」
低く凄んでくる男に、詞織が伏黒の服の袖を引いてきた。