第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「ふっ、しっ、ぐっ、ろ――ッ! 詞織――ッ‼ 七海さ――んッ‼」
一般人の保護を指示され、七海と伏黒、詞織、猪野の二級術師組で分かれて動き出そうとしたところで名前を呼ばれ、伏黒はビクッと身体を強張らせた。
「虎杖⁉︎」
「ユージの声……⁉︎」
どこから声を出しているんだ?
この声量なら、JR渋谷駅の日下部とパンダのところまで聞こえているのではないだろうか。
「七海サンも呼ばれてますけど……誰っスか?」
「はぁ……この声は虎杖君ですね。伏黒君と詞織さんの同期です」
「あぁ! 【宿儺の器】っスか‼︎」
猪野の言葉に詞織が微かに眉を寄せる。その【宿儺の器】だとして交流会では暗殺されかけ、普段から他者のマイナスの感情にさらされている虎杖を心配してのことだろう。
伏黒としては、今の猪野の発言から好悪どちらの感情も感じられなかったから気にならなかったが。
「伏黒――ッ! 詞織――ッ! いる――ッ⁉︎ 七海さ――んッ! 聞こえてますか――ッ!」
虎杖の絶叫は続く。
「メグ、あっち……あのビルの上みたい」
呪歌の術式の特性上か。虎杖の場所にすぐ気づいたのは詞織だ。
「止めてきます」
そう七海に言い、伏黒は詞織が指をさしだビルへ足を向ける。
「五条先生がぁっ! 封印されたんだけど――ッ‼︎」
「封印⁉︎」
「そ、そんなわけ……五条先生が……!」
一瞬にして呆れていた気持ちが冷め、伏黒たちの間に動揺が走った。
虎杖はたまにしょうもない冗句を言うことはあるが、こんな“つまらない”冗句を言うことはない。
おそらく、今詞織の“イヤな予感”が当たったのだ。
「三人とも、予定変更です。すぐに虎杖君と合流します」
七海が固い声音で伏黒たちを呼び、自分が向かうはずだったのとは反対方向へ踵を翻す。
「もし封印が本当なら――……終わりです。この国の人間 全て」
* * *