第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
【獄門疆】の封印の条件は、開門後 一分間、封印有効範囲 半径四メートル以内に封印対象を留めること。
そして、その一分は現実時間での一分である必要はない。対象の“脳内時間”で一分――……。
刹那――だが、彼の脳内では一分など とうに――……。
目の前の気味の悪い生物が解けたかと思うと、身体からキューブの破片がついた肉片が伸び、五条を縛り上げる。
「く――ッ!」
やられた!
痛みはない――が、身動きをとることができなかった。
「ダメじゃないか、悟。戦闘中に考えごとなんて」
呪力が感じられず、身体に力も入らない……詰みか。
「で……誰だよ、オマエ」
低い声で尋ねると、男は眉を下げた。
「夏油 傑だよ。忘れたのかい? 悲しいね」
「……肉体も呪力も、この【六眼(め)】に映る情報はオマエを夏油 傑だと言っている」
それだけではない。立ち振る舞い、声音、言葉遣い、仕草、纏う空気も全て自分が知っている夏油 傑。
「だが! “俺”の魂がそれを否定してんだよ! さっさと答えろ! オマエは誰だ⁉」
叫ぶように、怒鳴るように問いただすと、男はニチャリと気味悪く笑い、額の縫合線に手を伸ばした。
「キッショ。なんで分かるんだよ」
額の縫合線の糸を引き、蓋を開けるように頭を開く。そこに納められている脳には口がついていた。
その光景に五条は奥歯を噛み締める。