第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
改造人間が投入されてから、状況が悪化している。
全員を助けられないのは仕方がない。一級以上の任務になれば、犠牲者ゼロの方が珍しい。ある程度の犠牲を払ってでも呪霊を祓うべきだ。
上からはどんどん一般人が降ってきて、改造人間によって死者は増え続ける一方。
犠牲者が出ることを前提にすれば、あのムカつく呪霊どもを祓う方法なんていくらでもある。
相手に膨大な量の情報を流し込み、無限に知覚と伝達を強制させる必中効果を持つ五条の【領域展開】――確実に呪霊を祓うことはできるが、一般人も脳に深刻なダメージを負って廃人になるだろう。
だが、ホームの人間は救えなくても、ここに投入される前の人間は救える。
コイツらは分かっていてやっているのだ。
こちら側が想定している“犠牲”は呪霊に殺される人間であって、“自分が殺す人間ではない”と。
【領域展開】を誘っているのか。
そのくせ、お前に人間は殺せないだろと嗤っているのだろう。
――舐めやがって。
五条は右手で印を結ぶ。
『マジか?』
ツギハギが信じられないものを見るように声を上げた。同時に火山頭と【九相図】が息を呑む気配も感じる。
五条はそれに構わず、静かに唇を開いた。
「【領域展開――無量空処】」
宇宙のような空間が一気に広がる。その場にいた一般人、呪霊、受肉体――五条以外の全てに膨大な情報量が流し込まれ、知覚と伝達を無限に強制されて動きが止まった。