第43章 それはとんでもないトロイメライ【呪術廻戦0】
「あなたがまだ好きだと言ってくれているのなら、私もあなたの想いに答えます」
何、それ。
「ずるいですよ、七海さん。あたしはたくさん伝えたんですから、今度は七海さんから言ってください」
目尻にうっすら溜まった涙を拭って笑うと、七海も微かに笑顔を返してくれる。
「いいでしょう。あなたの二十歳の誕生日に指輪を用意しておきます」
「気が早いですね」
「私もいい歳なので。そろそろ身を固めたいと思っていたんです」
ふふ、と楽しくなってきて、星良は七海の腕に自分の腕を絡めた。
「あまりくっつかないでください。我慢が利かなくなる」
「いつからあたしのこと好きなんですか?」
腕を離すことなく聞くと、彼は眼鏡を押し上げる。
「聞いてどうするんです?」
「十年以上も待ってるんですから、少しくらい教えてくださいよ」
「あなたが高専に上がったときには、少なからず意識していましたよ。日に日に魅力的に成長するあなたからのアプローチには、ほとほと参っていました」
ボンッと一気に顔が赤くなったのが自分でも分かった。そんなに前から……もっと早く言ってくれればよかったのに。
「ところで、今から灰原とデートでしたか?」
「で⁉︎ いや、デートのつもりは……」
「よく二人で出かけているんでしょう? 灰原からも連絡はもらっています」
「ち、ちが……七海さんのことで相談に乗ってもらって……」
やましいことなど何もないのに、後ろめたい気持ちになるのはなぜだろう。
「……今日は、私も参加させてもらっても?」
「え⁉︎ いいんですか?」
嬉しい。あぁ、こんなことになるなら、オシャレしてくるのだった。五条がカスタムしてくれた高専の制服は可愛くて好きだが、デートならもっと違う服がいい。
やがて、灰原と合流する。
「やっとつき合い始めたんだ!」と灰原に言われて赤面するも、七海は「それは一年後の予定です」と真面目に返すのだった。
* * *