第19章 それぞれの想いが奏でるカノン【京都姉妹校交流会―団体戦―】
「禪院家相伝の術式【十種(とくさ)影法術(かげほうじゅつ)】っていう、自分が調伏した式神を影から呼び出す術式を使うんだ。詞織は安倍 晴明の血を引いていて、【歌楽具現術】――その歌に感じた印象を現実に起こす術式を使うんだよ」
「なるほど」
ぜひ見てみたい。
視線を画面に戻すと、釘崎が桃の箒の藁を掠め取っていた。
そして、おもむろに金槌を振りかぶり、藁人形に五寸釘を打ちつける。
芻霊呪法の効果により箒がダメージを受け、桃が空から落ちた。そこへ、釘崎は懐からピコピコハンマーを取り出す。
「え、ピコピコハンマー?」
「野薔薇の武器は藁人形と金槌と釘だからね。さすがに金槌を使ったら死んじゃうでしょ」
配慮してあるのか。
納得しかけたところで――釘崎優位の戦況は一変した。
まるで弾かれたようにして、釘崎の身体が吹っ飛ぶ。
「なっ……⁉︎」
パッと立ち上がるのと同時に、呪力を流し損ねてジョシュアからパンチを食らった。
それでも、順平はすぐにギュッとジョシュアの柔らかな身体を押さえつけ、呪力を流しつつ叫んだ。
「卑怯だ!」
桃の窮地に、真依が拳銃で釘崎を撃ったのだ。
「順平」
咎めるようにして五条に名前を呼ばれ、順平は渋々腰を下ろす。
確かに、京都校の教師がいる前でする発言ではなかった。しかし、卑怯な戦法をとったのは事実である。
だが、五条は淡々とした声音で順平の甘い考えを指摘した。
「そもそも、一対一の戦いなんて決まりはない。不意打ちも騙し討ちも立派な戦法だし、仲間が窮地に立たされたら助けるのは当然でしょ」
「それは……そうですけど…………すみません……」
自分に非があったことを認めて謝罪すると、歌姫は咎めることなく「気にしないで」と微笑んでくれた。
五条との絡みでは怒鳴ってばかりで怖いかと思っていたが、そうでもないようだ。