第15章 思惑の入り乱れるカンタータ【固陋蠢愚~殺してやる】
真人の素手が、虎杖の腹部に触れる――……けれど、虎杖は異形に変貌することなく、真人の頭を掴んだ。
「代わんねぇよ……言ったよな。ブッ殺してやるって」
呻くようにして呟いた虎杖は大きく背中を反らし、勢いよく顔面に頭突きを食らわせた。
何度も。
何度も何度も。
何度も何度も何度も。
顔の形が変わるまで繰り返す。
そして、放り投げるようにして解放し、続けざまに回し蹴りを繰り出した。
その光景を前に、星也は恐ろしさすら感じる。
もはや、どちらが呪いなのか分からない。
それほど、虎杖の表情は怒りに歪んでいた。
友を手にかけられそうになったから……?
虎杖にとっての友人や仲間というものは、己の命を懸けるに値するというのか。
そこで、星也は思い至る。
虎杖は祖父を喪くしていたはず。つまり、命を喪失する重みを、彼は知っているのだ。
異形を切り裂く。その度に軋む心を、星也は意識して無視した。
虎杖と対峙していた真人が一瞬にして彼の背後を取る。腕を金棒のように作り変えた真人の腕を、星也は天枢で斬り落とした。
「星也さん……!」
「無茶しすぎだよ。遅くなった僕も悪かったけどね」
虎杖の隣に立ち、星也は真人を見据えた。