第56章 伸ばした手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
「真人、さん……?」
「ツギハギ……」
名前を呼ぶと、彼はあの頃と変わらない穏やかな微笑を浮かべて振り返る。
『やぁ、順平。久しぶり。まさか呪術師になってるなんてね』
心が竦み上がる順平に、隣で釘崎が「吉野……」と気遣う声を掛けてくれた。
怯むな。自分はあの頃とは違う。
「そうだよ。僕は、母さんを殺した呪詛師を探すために……!」
そう言うと、真人が『ププッ!』と噴き出すように笑った。
『あはははっ! まぁだ そんなウソを信じてたんだ! ははっ! やっぱ順平ってバカだねぇ! プクククッ‼』
「え……ウ、ソ……?」
『【宿儺の指】を順平の家に置いたのは俺たちだよ。あ、俺たちって言っても俺じゃないよ。夏油の呪霊ね。虎杖と順平をぶつけて、虎杖に宿儺優位の“縛り”を科すのが目的だったんだ。まぁ、失敗したけどね。いやぁ、なかなか上手くいかないもんだね』
――「学校? いいんじゃない? 行かなくても。アンタぐらいの年頃は何でも重く考えすぎるからね。学校なんて、小さな水槽に過ぎないんだよ。海だって他の水槽だってある。好きにしな」
人に心なんてない。
その考えに救われた。
力を与えてもらった。
でも、自分が人を殺すことで母の魂が穢れてしまうなら……自分に人は殺せない。
――違う。
今 自分の心を染め上げているのは――間違いなく殺意だ。
「真人――ッ‼」
【澱月】を呼び出し、順平は警棒型の呪具を取り出した。
「吉野!」
釘崎の呼びかけも聞こえず、順平は真人に迫り、鋭い突きを繰り出す。