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一夜の夢物語

第4章 金魚の恋





…もう、行っちゃう…の?


は心底寂しそうに
眉を下げ、杏寿郎を見上げて言った。

潤んだ瞳と濡れた唇も相まって、
とても可愛らしく感じられ、このまま自分の腕の中で、
めちゃくちゃに抱いてしまいたくなる。


…っすまないが、こちらをあまり見ないでくれないか?
このまま君と居れば、抑えがきかなくなりそうなんだ。


しかし、杏寿郎は我慢しようとしていた。
ここでそのような行為に及んでは、他の客と同じになる。

二人の初めては初夜に…と考えたからだ。



杏寿郎さん…
でも、私は…まださよならしたくない…。
もっと、一緒に居たい…です。


杏寿郎は、自身の昂りを鎮めるように、
一度長めに息を吐くとの前に屈んだ。



俺も、もっと一緒に居たい。当然だろう?
しかし、このまま二人きりで居たら、
俺は君に手を出さない自信がない。


杏寿郎の言葉に、は頬を赤く染めた。


わ、私は…杏寿郎さんになら、
何をされてもいい…です。


少し視線を下に向けながら、遠慮がちにが言う。
その様子があまりに可愛らしく…
杏寿郎も顔を赤く染め、自身の手で顔を覆った。


…まいったな。
本当は、初夜に…と思っていたんだが、
…どうやら、そのような事を言われて我慢できるほど出来た男ではないようだ。


不甲斐なしっと呟きながら、
照れ笑いを浮かべる杏寿郎の顔がの顔の真ん前にきた。

その表情が、とてつもなく可愛らしく感じられ、

は同じ人に、二度目の恋に落ちた。



杏寿郎…さん、大好き…です。
私を…見つけてくれて、ありがとう…。



感謝など、する必要はない。
こそ、俺を想っていてくれてありがとう。
…愛している…。



二人の距離が縮まり、やがて一つになる。
二人は互いの存在を確かめ合うように、
角度を変え、何度も何度も口付けを重ね合った。










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