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一夜の夢物語

第4章 金魚の恋





ー…


っ…ぁあっんっ…あ、もぅ…っ


ー…はぁっ…いい具合だな、相変わらず…


とある部屋の一室で
男女の睦み合う声が響いている。

そこに愛などというものはなく、
女はただひたすらに男の欲を受け入れる。


感じているフリはいつもの事。
悟られぬよう、甘い声を上げながら、
相手の精が尽きるのを待ち続ける。


…はぁ、出すぞ…っ


んんっ…ぁあっ…!


男は腰の動きを上げ、
女の腹に己の精を放った。


ー…


行為後、身体を清めると男は部屋を後にする。


ここは遊郭。
女ー… はここの女郎であった。

もとはそこそこの名家の生まれであった。
つい半年前までは許婚との祝言も控えた、ごく平凡な娘であった。

しかし、父親が家業に失敗し借金を作った。
父は年頃だったを店に売ると、
体面の為、許婚には何者かに拐かされた事とした。

あまりに身勝手な父の行いで、
長年想い慕っていた許婚に別れを告げる事もできなかった。



…杏寿郎…さん……。

彼は、代々続く名家の子息だった。
鬼という異形の、人間に害をなす生物を滅する為、
弱き人を守る為に刀を振るう真っ直ぐなあの人。

家で決められた婚約ではあったが、
その真っ直ぐな人柄には心惹かれていた。



ー…恐らくは、もう他の縁組が決まっているだろう。
それに、もう自分には関係のない事…。

このような場所で操も奪われ、
日々男達に身体を暴かれ、奪われ続けている。

何の為に生きているのか…
心がすり減るような日々の中、
杏寿郎との思い出だけがを支えていた。



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