第6章 接近サバナクロー!
本日の授業を全て終え、エリーは渡り廊下を歩いていた。向かう先は、文芸部の部室。ではない。
何が悲しくて、誰もいない寂しい部屋で執筆稼働などしなくてはいけないのか。彼女にとって、文芸部はもはや帰宅部と何ら変わりはなかった。
借金に塗れたエリーが向かう場所など、ただ一つ。モストロ・ラウンジである。そういうわけで、鏡舎を目指す。
目的の場所へ到着すれば後はいつも通り、オクタヴィネル寮へと繋がる鏡を通るだけ。
の、はずであったが…いつも通りとは違うハプニングがエリーを襲う。
『っ!?』
何故か、足が一人でに動き出す。いや、足だけではなく、体全体がエリーの言うことを受け付けない。
え?なに?ちょ!と、短い声をいくつか発してる内に、彼女の目の前には鏡が。
それは、オクタヴィネル寮へ通ずる鏡とは違う。サバナクローへと続く鏡であった。
いよいよ鏡面に、片足を突っ込んだ。徐々に体を操られる感覚にも慣れ始めたエリーは、精神を集中する。
『そんな、ところに…用は、ない!』
バチっと、特大の静電気が弾けるみたいな音がした。それと同時に、エリーの体は解放される。
異様な感覚と格闘した疲労と、なんとか解放された安堵感が同時に訪れる。彼女はしばらく黙って息を整えた。
そうしていると、鏡の後ろから、影がぬっと現れる。その人物に、エリーは見覚えがあった。
『あ、貴方は…サバナクロー寮生でハイエナの獣人、ラギー・ブッチ先輩!』
「御名答〜。シシシッ、不自然に感じるくらいの ご丁寧な説明どーも」