第14章 高専
「ははっ、なまえ残業続きのサラリーマンじゃん。ウケる」
「…悟は白髪のおじいちゃんだけどね」
「ざんねーん、銀髪でーす。神秘的な方でーす」
「なんか学生の時より返しが進化してるっ…!」
そんな中でも、同期であるクズは、通常営業を崩さない。2人を見ていると、家入は、あの時に自分も戻ったのでは無いかと錯覚しそうになる。
「それで、なまえの今後については決まってるの?」
「いや、まだ、」
「大体決まってるよ。決定したら学長から連絡くるんじゃないかなー」
「…悟、お前勝手に話進めてるだろ。なまえが宇宙人見るような目で見てるぞ」
「ホントだー。すごい顔」
ケラケラと笑う五条に、なまえは言葉も出てこない。
だが、自分の今後が自分の預かり知らぬところで決められていくことに、全く不安を感じないと言えば嘘になるが、未だ未成年である彼女にとっては、ある意味それが当たり前と言われれば、そうなのだとも思う。
社会経験のない彼女は、人に物事を決められるということに、あまり抵抗が無かった。
「私、高専に編入するの?」
先程顔を合わせた、高専二年生の3人組の顔が思い浮かんで、気づけばそう口にしていた。
「なまえはそうしたい?」
質問に質問で返されて、彼女は考えるように首を傾げる。五条の目元はアイマスクで隠されていて、表情がよく分からないが、こちらを見ていることは分かった。
「うーん…ちょっと、イヤ、かなぁ」
それは、漠然と浮かんだ気持ちだった。
彼女としては、つい昨日まで。普通に硝子や悟とクラスメイトをしていたのだ。それが、急に知らない人とクラスメイトになる、ということが、まるで元の仲間達と切り離されるような、そんな気持ちになって。
嫌だと、珍しく否定的な言葉を口にしたなまえに、家入は驚きに少し目を見張り、五条は口元に笑みを浮かべた。