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花火 ー呪術廻戦ー

第14章 高専


『…あんた誰?』


問われて、私は一歩後ずさる。
戸愚呂を巻くように感情が胃の中で溜まって、吐き出す場所もなく飲み込まれる。

なぜ、もどしたのか。


『誰よ!なまえを返してよ!』


その叫びへの答えを、知っている。
返せない。もう、返せないのだ。
彼女の知る人物を返すことは、もうできない。


なぜなら、時は戻されたのだから。


時を戻すことは、〝私〟を殺すことだ。
戻った私は、もう戻る前の〝私〟ではない。
その知識も経験も、何もかもが消える。

そして、戻す時間が長ければ長いほど、積み重ねた経験は大きく、私は別人になる。


知っていたのに、〝私〟はもどすことを選んだのだ。


物の散乱する部屋
汚れた制服
破れた教科書

残された痕跡から、〝私〟を想像するしかない。
経験していない私は、想像するしかできない。

自分が消えると分かっていて、戻すことを選んだのだ。

それほどの、日常だったのかもしれない。
消えてもいいと、消してしまいたいと、思うほどの。経験していない私には、〝私〟を責めるなんて、できないのかもしれない。

でも、それでも。




『化け物!』




〝私〟には、友が、いた。

〝私〟が傷付くことに心を痛め、
〝私〟のために、得体の知れない私へと立ち向かう。

友が。

それを置き去りに、時を戻した。
置き去りにしてでも、戻したかったのだろう。
理解できない。
理解したくない。

友はすぐに気づいた。

変わった私に。まるで、大切な友人に成り代わったように、その場所へと収まろうとする私。
それはきっと、『化け物』の様に映ったのだろう。

そう思ったのは、友だけではなかった。



昔から私の周りで起こる奇妙な出来事。
なんてことはない、私の術式。

でも、周りはその出来事と、変化した私を見て。一つの結論を出した。


あの子は化け物だったんだ、と。





私の居場所は、足元が崩れていく様にして消えていった。全ては、私が選択を間違えたから。
私が、呪術なんてものを使えたから。

呪術を、使えたから。



だからー…


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