第13章 再会
「…え、………悟?」
「ピンポーン」
正解の反応を返したにも関わらず、問いかけたなまえ自身が、信じられないという顔をしている。そしてやはり彼女は、否定の言葉を口にした。
「…いや、いやいやいや、お兄さん悟と顔似てるからって、そんな冗談…」
「じゃあ試してみる?」
なまえの反応を見ればよく分かる。彼女の時間はあの頃のままなのだ。
六眼を持つ五条ですら、彼女が学生時代のあの頃のまま生きて存在していることを中々受け止め切れなかったのだ。そんな六眼のような力もない彼女が、学生時代から10年以上時を経た目の前の人物を、五条悟だと納得できないのも当然で。
てっとり早く、彼女の前に手を差し出す五条。無下限呪術を使えるのは、現代に自分ただ一人なのだから、それが何よりの証拠になる。
彼の意図を汲んだなまえは、一度、五条の顔を困ったように見て。それから、自分の右手を、持ち上げ、彼の手に重ねようとして。
彼の手に触れる前に、なまえの手は、無限に阻まれた。
「ね?」
首を傾げる五条に、なまえは頭では理解したようだったが。それでも、それを受け止められているかは別だ。
あまり釈然とはしない表情を浮かべながらも、とりあえずは目の前の人物を仮に五条悟であると思うことにしたようで。
「…どうして老けてるの?」
ポツリとした問いかけは、〝彼女らしい〟ものだった。やはり、なまえなのだと思えば、その悪気のない憎まれ口ですら、愛しく思えて。
「…やばい、そのムカつく感じ懐しすぎて泣きそう」
長い年月を経たというのに、全く彼女への想いが変わっていなかったことに、自分自身が驚き、上手く笑顔を作ることができなかった。泣きそうといったのも、あながち嘘ではない。
だが、なぜ彼女が生きて存在し、あの廃ビルにいたのか。それは避けては通れない問題だ。突然現れたということは、その逆があり得る可能性もあるのだ。
そして、なまえがなぜ五条が老けているのかと問うた通り、彼女は、今があれから10年以上経っていることを理解していない。彼女が心に受ける衝撃を考えれば、直接それを告げることは憚られて。
「ねぇ、次は僕の番。なまえはなんで、あの廃ビルにいたの?」